医療品の処分管理について(遺品整理を考える)

本人が生前使っていた「薬」などの医薬品は、処分整理が難しいものの一つと言えるでしょう。

かかりつけの病院からもらっていたものか、市販の薬かによってもその処分方法は違います。

薬などの整理は主に「安全・法令・個人情報・返却可否」の4点を念頭に処理を考えるべきとされています。

主な医薬品の種類と対応

病院からの処方薬

まずは医療機関でもらった薬、いわゆる処方薬が一般的でしょう。

  • 錠剤・カプセル
  • 外用薬(塗り薬・貼り薬)
  • 吸入薬
  • インスリンなどの注射薬

注意点

処方薬は他人に譲渡する事は許されていません。これらを譲渡すると違法になります。

処方薬は、仮に未開封であっても再利用する事は不可となっています。

処方薬には「麻薬指定薬」が含まれる場合あります(麻薬指定薬は後述)。

市販薬(ドラッグストアなどから購入した品)

  • 風邪薬
  • 鎮痛薬
  • 胃薬
  • サプリメント

注意点

これらの薬は市販薬ですので家族が使うのは問題ありません。ただし原則自己責任にて使用する事になります。

薬ごとに設けられている使用期限は必ず確認する様にしましょう。

使用するのはいずれも未開封が前提であり、開封済みとなっている市販薬は基本的に廃棄をする事をお勧めしています。

麻薬指定薬は特に注意が必要

1.麻薬・向精神薬などの麻薬指定薬

  • モルヒネ
  • フェンタニル貼付剤
  • 睡眠薬・抗不安薬の一部

これらは勝手に廃棄しない方が良い薬の部類となりますので、薬局または処方元の医療機関へ相談して下さい。

決して他の人に渡したり使用したりしない様にして下さい。

2.抗がん剤

・経口抗がん剤など

これらは有害性があるため、取り扱い注意となっています。

3.注射針・医療廃棄物

  • インスリン針
  • ペンニードル

医薬品と一緒に注射器などがある場合は扱いを慎重にしましょう。

糖尿病の方が治療のため、自分でインスリンを打っているケースはよくあります。

その使用済みの注射器や針などは「特別管理一般廃棄物」に区分されるものです。

基本的には通常のゴミに出さず、医療機関または薬局へ提出する必要があります。

捨てる前に一度病院に確認する事をお勧めします。

整理する事は「個人情報を扱う」という事

1.個人情報

薬袋には、氏名・生年月日・病院名などが記載されています。

これらは全て本人の個人情報となるため、袋ごとそのまま捨てずに確実にシュレッダー等で刻んでおく事が推奨されます。

2.保管方法

袋から出すと非常に小さな錠剤などが入っている場合が多いです。

小さなお子様・ペットが薬を誤飲しない様、即時分別する必要があります。

高齢者施設入所中だった場合は、施設へ確認する様にして下さい。

3.廃棄方法(一般的な目安)

薬の種類主な対応
錠剤中身を出して可燃ごみに出す(自治体で確認)
液体薬紙に吸わせてから可燃処理する
外用薬可燃処理する
注射針医療機関へ提出

※これらの処理は自治体によって異なります

薬の整理トラブル

よく「高価な薬だから何かあれば家族で使いたいので取っておく」というご家族の方が相当数いらっしゃいますが、これは大変危険な行為です。

これらの薬は服用する本人が医師の管理の元に処方されたものですので、管理外の人々の使用は大変危険です。

基本的に期限切れの薬を長期放置しておく事は、後々トラブルの元になります。

各医薬品の使用期限は常に確認をしておき、生前から古いものを置かない様にしておくべきでしょう。

対象患者が亡くなった後に薬を紛失した事でトラブルとなり、結果として法的問題になる事もあるのです。

在宅緩和ケアでのモルヒネ紛失事例

ここで実際にあった「麻薬及び向精神薬」の紛失トラブル事例をご紹介しましょう。

在宅で終末期医療を受けていた患者様がいらっしゃいました。

その方が主に使用していた薬は「モルヒネ内服液・モルヒネ徐放錠」などです。

その患者が死亡した後に、遺族が薬を整理しています。

数日後に訪問看護師が残薬の確認をしたところ、数量が合わないという事で問題が発生しました。

問題となった原因

モルヒネは厚生労働省が管轄する「麻薬及び向精神薬取締法対象」に指定された薬物です。

そのため取り扱う医療機関は、厳密な在庫管理・交付記録管理の義務があります。

残数が合わない場合は、医療機関が保健所へ報告する義務がある訳です。

場合によっては警察へ届出が必要になったり、家族へ事情確認が入ることがあるケースもあります。

今回はこのケースに該当した訳です。

事の発端と結果

実際に起きた経緯としては典型的なパターンなのですが、家族が「不要」と思い置いてあったモルヒネを廃棄していた事が事の発端です。

家族がモルヒネを破棄した事を報告していなかったので、当然記録上の数量と実残数は不一致になります。

※別の例では、一部を形見として保管したり別の第三者が誤って処分したというケースもあるそうです。

発覚後に医療機関が行政指導を受けたり、警察が家族に対して事情聴取をおこない、「横流しの可能性」が無いかどうかしっかり確認する事になりました。

※家族が逮捕されるケースまでいくのは極めて稀ですが、事情聴取の対象になる事は多いというのが実態です。

ポイント

  • 家族が悪意なく処分しても「紛失扱い」になる
  • 医療機関側の管理責任問題に発展
  • 必ず医療側に連絡が安全

対応が厳しい理由

モルヒネ等は医療用麻薬であり非常に依存性が高い薬です。

過量摂取をすればもちろん死亡リスクが高いため、錠剤であれば1錠単位で管理されています。

さらにこれらの管理を放っておくと、不正転売の対象になりえる薬なのですね。

特に問題になりやすいケース

  • フェンタニル貼付剤(使用済みでも有効成分残存)
  • モルヒネ内服液のボトル残量不一致
  • 訪問看護管理下での未報告廃棄

正しい医薬品の整理対応

患者死亡後、そういった医療用麻薬に該当する薬は触らずに医療機関へ連絡するのが一番の手立てです。

訪問看護師または主治医が回収するのを待ちましょう。そして立会いのもと廃棄処理するのがセオリーです。

死別して悲しみに暮れる時ではありますが、こういった管理措置は必ず厳格にしておくべきです。

病院や施設内ならばその意識は高いと思いますが、在宅だとどうしても管理意識が低くなる傾向にあります。

医薬品の廃棄や整理は慎重に、適切におこなう様にしましょう。

病院からもらった薬は生前から整理しておくべき

繰り返しとなりますが、市販の薬でありつつ未開封で使用期限内であれば、使っても良いと思います。

仮に開封されていても、お薬な訳ですから廃棄する事をお勧めいたします。間違っても飲んだりしない様にしましょう。

一方病院から処方された薬に関しては、その病院に問い合わせてその処理方法を確認した方が良いです。

そのまま廃棄をしても構わない薬もありますが、劇薬に相当する強い作用を起こすものもあり、病院に返却する様に指示される場合があります。

かかりつけの医者や通院している病院・主治医の情報・お薬手帳などを事前にまとめておくと良いでしょう。

これらは突然の入院時にも把握しておく事で役立つ情報となります。